2024年6月3日月曜日

『白山史学会会報』第125号[メルマガ4号]2024年6月4日

白山史学会会員のみなさま

会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

『会報』第125号(メルマガ4号)を送らせていただきます。


なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)までいつでもご連絡ください。

*******目次*******

1. 白山史学会第60回大会・第52回総会のお知らせ

2. 会務報告

3. 田中文庫選書委員会からのお知らせ

4. 白山史学会ホームページに関するお知らせ

5. 常任委員選挙に関するお知らせ

6. 新刊紹介

7. 『白山史学』第61号原稿募集のお知らせ

8. 編集後記

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1. 白山史学会第60回大会・第52回総会のお知らせ

白山史学会第60回大会・第52回総会は、6月29日(土)の午後1時半から対面およびオンライン配信のハイフレックス方式で開催されます。プログラムは以下の通りです。

◯公開講演

「スパルタ―神話と実像―」  東洋大学文学部史学科教授 長谷川 岳男氏

「紫式部と道長・実資」 国際日本文化研究センター名誉教授 倉本 一宏氏

◯研究発表

「『播磨国風土記』と「郡的世界」の実像―播磨国揖保郡を中心として―」

                     東洋大学大学院科目等履修生 小倉 草氏

「オスマン帝国における「3月31日事件」(1909年)に関する一考察

                          ―連隊上がりの将校について―」

                    東洋大学人間科学総合研究所客員研究員 矢本 彩氏

◯会場:6317教室(6号館3階)

◯配信URL: https://meet.google.com/kse-tknq-itk

・対面、オンラインとも事前登録なしでどなたでもご参加いただけます。会場にお越しになることが難しい方も、もしよろしければぜひご視聴ください。なお、オンラインで参加される方が当日配布資料をダウンロードするためのクラウストレージトレージ・アドレスは当日お知らせします。研究発表の要旨は以下の通りです。

[小倉報告要旨]

 古代の播磨国は、倭王権の中枢部である畿内の西の周縁部にあり、畿内と吉備や出雲等の間に位置し、瀬戸内海を通じて北九州や朝鮮半島へも繋がるという場所に位置していた。揖保郡は播磨国の西部にあり、瀬戸内海に面しており、『播磨国風土記』に渡来の人々を始めとした列島各地からの移住記事が多くみられる地域である。揖保郡の律令制下の郡的世界の実像を、『播磨国風土記』と考古学の成果をもとに探った。

 『播磨国風土記』では、里によって記される氏族は異なり、揖保郡全域を統括しているような氏族は見られないことから、里ごとに祖先の系譜が異なる氏族が居たことが窺われた。さらに、里の記載順から、3つの群に分かれて支配されていた可能性が高いことが推定されたが、地形や古墳の状況もそれを裏付けるものであった。さらに、古墳や古代寺院の動向から、7世紀後半から8世紀の初めごろには、複数の郡内における最有力氏族と多くの中小氏族が各里に並立していたことが推定された。

 これらのことから、揖保郡は一括支配されていたのではなく、3つの群に分けて行政支配され、3つの群の中においても複数の渡来系を含む有力な氏族が並立していたという郡的世界であった可能性が高いことが導き出された。これは、栄原永遠男氏が、播磨国賀茂郡で、既多寺大智度論の知識にみられる氏族の配置から、針間国造・針間直は4つの小集団に分かれ、それぞれ他氏と階層的な関係を結び、賀茂郡内に地域的に分かれて盤踞していたことを指摘したことと同様の結果と言える。また、7世紀後半に最有力な古墳が築造された地域の多くでは、6世紀の後半頃には前方後円墳や渡来系の石室や副葬品を持つ古墳、7世紀には有力な古墳が造られ、その後も競うように各里で古墳群や寺院が造られている。これは、森公章氏が指摘した、律令国家成立以前から当該地域に歴史的支配を築いていた在地の中小豪族が拮抗するという多極的な郡的世界が展開されていたことも窺える結果であった。

 『播磨国風土記』が編纂された時期には、揖保郡は3つの群に分割して行政支配されていた可能性が高いことが分かったが、孝徳天皇の時には宍禾郡が揖保郡から分割され、中世には揖東郡と揖西郡の2つに分かれている。今後、この郡の変遷と当時の地域支配体制との関連について調べていくとともに、播磨国の他の郡についても同様に郡的世界の実像を探っていきたいと考える。

[矢本報告要旨]

 オスマン帝国(1299頃~1922年)で、1908年7月に青年トルコ人革命が発生した。この革命により、憲法の復活が宣言され、第二次立憲政(İkinci Meşrutiyet)がはじまった。この革命の主導者は、青年トルコ人であり、「統一と進歩協会」所属の一部の将校だった。青年トルコ人とは、憲法の復活を目指す若い知識人を指す。「統一と進歩協会」による革命後の政治体制は、必ずしもすべてのオスマン臣民に受け入れられたわけではなかった。革命直後から、デモやストライキという形でその不満が表面化していた。

 1909年4月、帝都イスタンブルで「3月31日事件(31 Mart Olayı)」が発生した。先行研究において、この事件は現状に不満を抱く兵士の反乱と認識され、先の青年トルコ人革命に対する「反革命」という評価も得てきた。事件の首謀者として処刑されたのは、デルヴィーシュ・ヴァフデティ(Derviş Vahdeti, 生没1870-1909年)である。彼は『火山(Volkan)』紙の出版権所有者であり、主筆を務めた。『火山』紙がシャリーアを重視したため、事件が「イスラーム主義」によるものとみなされることもあった。しかしながら、同事件は「イスラーム主義」のみに起因するものではなかった。多様な立場の人々が関わっていたため、先行研究では、事件の原因について大きく三つに分けて論じられてきた。一つ目が「統一と進歩協会」と彼らに対抗する勢力による青年トルコ人内部の勢力争い。二つ目がかつてマドラサの学生に課されていた徴兵免除試験の再開問題。そして、三つ目が陸軍内部の部隊再編と大量解雇に端を発する士官学校出身将校と連隊上がりの将校の対立である。

 報告者はこれまで『火山』紙の分析を中心に、ヴァフデティの言動を明らかにしてきた。また「3月31日事件」後の裁判記録の分析から、処罰された者の多くが軍人(36%)であり、特に極刑に処された者の約80%が軍人であったことを指摘した。同事件を決起したのは軍人であり、また事件を鎮圧したのも軍人であったが、先行研究において、連隊上がりの将校に関してはその動向が明らかにされてこなかった。

 本報告では、「3月31日事件」の中で重要な役割を担っていた軍人に焦点をあてる。まず、連隊上がりの将校に関する『火山』紙における評価を明らかにし、また他の定期刊行物や公文書史料を元に、事件前後の連隊上がりの将校らの動向を分析する。同事件の原因ともいわれた士官学校出身将校との対立問題を明らかにする一助とする。

2. 会務報告

今年度の活動状況について、以下の通りお知らせいたします。

◇新入生歓迎講演「歴史学への招待」(2024年4月4日)

・「「山岡鉄舟」とは何者なのか ~私の歩んだ「歴史学」への道のり~」

           東洋大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程 本林 義範氏

◇卒業論文発表会(2024年5月11日)

・「貴族の世の陰と陽 ―陰陽師と女性との関わりから―」  本学卒業生 小森  望夢氏

・「ウマイヤ朝におけるカリフの継承 ―スフヤーン家のカリフ再考―」 

                            本学卒業生 大城  清夏氏

・「ウィリアム・ペンの「聖なる実験」」          本学卒業生 稲坂  夏実氏

◇常任委員会

常任委員会を以下の日程で開催いたしました。第1回(7月28日)、第2回(10月6日)、第3回(11月10日)、第4回(12月8日)、第5回(3月4日)、第6回(4月17日)、第7回(5月24日)。

3. 田中文庫選書委員会からのお知らせ

選書委員会では、「田中文庫」として史学史・歴史学理論に関する書籍を日々収集しています。「田中文庫」の書籍について、選書委員会では会員の皆様からの御意見、収集希望書籍を日々受け付けております。専攻を問わず、史学史・歴史学理論などに関する書籍についてお心当たりがございましたら、下記の住所、または白山史学会メールアドレスまでお知らせ下さいますようお願いいたします。蔵書リストなど、詳細は白山史学会ホームページ「田中文庫」をご覧ください(http://hakusan-shigaku.org/library.html)。

・住所:112-8606東京都文京区白山5-28-20東洋大学文学部史学科共同研究室内 

    白山史学会選書委員会

・E-mail:hakusanshigakukai@gmail.com

4. 白山史学会ホームページに関するお知らせ

白山史学会(http://hakusan-shigaku.org/index.html)では『白山史学』掲載論文の一覧や今後の活動予定等を掲載しております。また機関リポジトリ収録の『白山史学』バックナンバーへのリンクもありますので、ぜひご覧下さい。

本会報[メルマガ]も学会ホームページからバックナンバーの閲覧が可能になりました(https://hakusanshigakukai.blogspot.com/)。


5. 常任委員選挙に関するお知らせ

 白山史学会では、白山史学会常任委員次期候補者の立候補・推薦を総会の二週間前から受け付けいたします。候補者の届け先は下記となっております。なお応募や推薦は総会当日も受け付けます。

【届け先住所・メールアドレス】  

・住所:112-8606東京都文京区白山5-28-20東洋大学文学部史学科共同研究室内 

        白山史学会 

・E-Mail : hakusanshigakukai@gmail.com

6. 新刊紹介

メルマガでは、今後会員が関係する新刊書籍を積極的に紹介していきたいと考えています。今回の対象書籍は、岩下哲典・中澤克昭・竹内良男・市川尚智編『信州から考える世界史』(えにし書房、2023年)です。なお雑誌『白山史学』には会員書籍の書評も掲載されていますので、そちらもぜひご覧ください。

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 わたくしごとで恐縮だが、私は2021年5月に伊那へ旅行に行ったおり、たまたま立ち寄った満蒙開拓平和祈念館で、偶然にも語り部定期講演に参加する機会を得た。本書でも触れられているように、このあたりは長野県内でもっとも多い、約8400人が満蒙開拓団として満洲へと送出ている地域である。満蒙開拓平和祈念館は、満蒙開拓の歴史を忘れないために、定期的に当事者となった方の講演会を開催している。

 さて、3年経った今でも忘れられない、「2歳のときの話をしろと言われても無理」という語り部の衝撃発言があったこの講演会では、満洲での生活とロシア進攻からの逃避行について語られた。特に印象的だったことは、満洲での生活状況を話すなかで、他民族のことにいっさい触れられなかったことであった。満洲国は「五族協和」をスローガンに掲げていたものの、その実態の一端が垣間見えたように思われた。

 このように信州は、大陸との関係が深く、さらには記憶と忘却とが混在した特徴的な地域である。その信州を起点として世界の歴史との関係を紹介する本書は、ともすれば忘れがちな「世界」の存在に、あらためて目を向けさせてくれるものといえよう。

 本書は、「古代・中世」・「近世」・「近代」・「現代」の4つに時期を区分しつつ、それらのなかで特徴的な、ヒト・モノ・できごとを取り上げ、世界とのかかわりに留意しながら紹介するというスタイルをとっている。特に「です・ます」調の文体を採用している点が特徴で、幅広い読者に語り掛けていくという姿勢を貫いている。

 「はじめに」で、「本書を読まれる皆さんにお願いしたいのは、自分のこととして、地域の歴史をとらえていただきたい」と注意を促しているように、多くの章では、地域の歴史を起点にしながら、現在に生きる私たちがどのように歴史と向き合っていくかということを考えていけるような内容となっている。例えば、岩下哲典「豊臣秀吉の「村切り」と「たのめの里」」の章では、JR中央本線小野駅近くにある小野神社と矢彦神社が小川を挟んで両隣にあるのに、小野神社は塩尻市北小野地区だが、矢彦神社は同所よりも南にある唐沢川以南の辰野町小野地区の飛び地となっていると紹介している。そしてその原因は豊臣秀吉による「村切り」にあるのではないか、として現代と過去とを結びつけていく。

 率直に言って、私は本書で書かれていることが、知らないことばかりで非常に新鮮であった。そして今まで漫然と信州へと行って見てきたものが、実は非常に歴史的な経緯の結果として存在していることに、いまさらながら気づかされた。欲を言えば、一部の著名人ではなく、信州に住む人びとがどのように生活してきたかについて、もう少し掘り下げれば、より多くの読者の共感や興味を引き起こせたのではないかとも思う。にもかかわらず、本書が扱う内容は幅広く、読者に歴史に興味を持ってもらうための役割を大いに果たしていると思う。本稿を読まれた方はぜひ、同書を手に取って、現在から地域の歴史に触れ、世界とのかかわりについて、考えを巡らせてもらいたい。 (中村祐也[庶務局長])

7. 『白山史学』第61号原稿募集のお知らせ

 本会会誌『白山史学』第61号(2025年3月発行予定)の投稿原稿を募集しております。投稿規定は下記の通りとなりますので、ご参照ください。

《論文》

・400字詰原稿用紙縦書で、80枚以内(注:図表を含む)。

・図表は止むを得ないものに限り、5点以内。

・初校は筆者にお願いしますが、校正は誤植訂正に限り、書き直し、追加などはご遠慮ください。

・必ず欧文タイトルを付してください。

・デジタル・データで入稿する場合は、ファイル形式を明記し、他にテキストファイルとA4縦用紙に、54文字×19行で縦書きに打ち出したものを付してください。

《研究ノート》

・400字詰原稿用紙縦書で、30枚程度(注:図表を含む)。その他は論文と同様です。

*《論文》《研究ノート》共に、投稿は会員の方のみに限ります。投稿締切は2024年10月31日(当日消印有効)です。採否については編集委員会の議を経て、常任委員会の責任において11月末頃にお知らせします。

なお、本会メールアドレス(hakusanshigakukai@gmail.com)への電子投稿(メール添付)を推奨します。

*本誌に掲載された論文等の著作権は本会に帰属するものとします。ご自身の著書に収録するなどの際には、本会にお知らせください。

<編集委員会> 岩下哲典、大豆生田稔、木下聡、鈴木道也、高橋圭、千葉正史、西村陽子、長谷川岳男、朴澤直秀、村田奈々子、森公章(五十音順)

8. 編集後記

 本号は、6月29日に開催いたします白山史学会第60回大会・第52回総会の特集号です。今大会では、公開講演を長谷川岳男先生と倉本一宏先生にお願いいたしました。また、東洋大学大学院科目等履修生の小倉草氏および東都リハビリテーション学院非常勤講師の矢本 彩氏に研究報告をお願いしました。ぜひご参加ください。大変お忙しい中、講演依頼をお引き受けくださいました長谷川岳男先生、倉本一宏先生、研究報告をお引き受けくださいました小倉草氏、矢本彩氏に改めてお礼を申し上げます。今後とも本会の活動にご理解ご協力賜りますよう、よろしくお願いいたします。 (庶務局長 中村)


『白山史学会会報』第127号 [メルマガ6号] 2025年4月2日

白山史学会会員のみなさま 春光の候、会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。『会報』第127号(メルマガ6号)を送らせていただきます。 なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)まで、い...