白山史学会会報 第131号[メルマガ10号]
陽春の候、会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
『会報』第131号(メルマガ10号)を送らせていただきます。
なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)まで
ご連絡いただけますと幸いです。
*******目次*******
1.2026年度卒論発表会のお知らせ
2.田中文庫選書委員会からのお知らせ
3.新刊紹介
4.第62回大会・第54回総会について
5.編集後記
*****************
1. 2026年度卒論発表会のお知らせ
2026年度の卒論発表会は、5月9日(土) 13:30〜16:15 に対面およびオンライン配信にて開催となります。
会場の詳細は、4月下旬に発行予定の会報第132号[メルマガ11号]にて改めてご案内させていただきます。
今年度の報告者と報告題目は以下のとおりです。
◯日本史分野 難波 虎之助 氏 「戦国期『同盟』に関する考察」
◯東洋史分野 小嶋 環 氏 「清朝初期における皇室婚姻政策と多民族国家体制の形成」
◯西洋史分野 関口 要 氏 「ビザンツ帝国における軍政と行政の関係
:ゲニコス・コンメルキアリオス印章を中心に」
対面・オンラインとも事前登録なしでどなたでもご参加いただけます。
会場にお越しになることが難しい方も、オンライン配信をご活用ください。
なお、Zoomでの配信を予定しております。
配信URLならびに当日配布資料に関するアドレスも後日のお知らせとなります。
各報告の要旨は以下の通りです。
◯ 難波 虎之助 「戦国期『同盟』に関する考察」
戦国期の軍事同盟のなかで最も軍事的に強固であったものとして、攻守軍事同盟があげられ、その代表的事例とされるのが今川家・武田家・北条家の間で結ばれた駿甲相三国同盟である。 そのなかでも、武田家と北条家の間で結ばれた第一次甲相同盟は、両家の政治・軍事行動に大きな影響を与えた同盟として知られている。
しかし、その同盟の成立時期については研究者間で見解が分かれており、同盟の成立時期を明確にしておくことは第一次甲相同盟のみならず、戦国期の軍事同盟を検討するうえでも不可欠である。
また、その同盟期間中の具体的な関係について検討した研究は黒田基樹氏の著作に限られ、個別事例の検討は十分とはいえない状況にある。
そこで本報告では、第一次甲相同盟の成立から崩壊に至る過程を再検討し、武田家と北条家の政治的関係を明らかにすることで、戦国大名の同盟期間中の関係を考察するうえでの一助とする。
◯ 小嶋 環 「清朝初期における皇室婚姻政策と多民族国家体制の形成」
本報告は、清朝初期における皇室婚姻政策が、多民族国家体制の形成において果たした政治的機能を通時的に検討するものである。清朝は満洲・蒙古・漢人など多様な民族から成る国家であり、その統合において婚姻は重要な政治手段であった。太祖ヌルハチ期には満洲内部の諸勢力との通婚を通じた統合が進められ、八旗体制の基盤形成に寄与した。
ついで太宗ホンタイジ期には、蒙古諸部との婚姻関係が強化され、対外的な同盟形成と勢力再編が推進された。
また、公主降嫁や額駙制度を通じて外部勢力を皇帝権のもとに組み込む仕組みが整えられた。
さらに入関後の順治・康熙期には、蒙古との関係を維持しつつも漢軍八旗や漢人勢力との結合が進み、婚姻政策の役割は変容していく。
以上を踏まえ、皇子婚と公主降嫁という二つの婚姻形態が、内部統合と外部連合という異なる機能を担いながら、多民族国家形成の重要な装置として機能したことを明らかにする。
◯ 関口 要 「ビザンツ帝国における軍政と行政の関係
:ゲニコス・コンメルキアリオス印章を中心に」
本研究では、6~9世紀のビザンツ帝国において、軍事政策と行政制度の変化がどう関係していたいのかについて、特に7世紀を中心に検討する。
当時のビザンツ帝国は、周辺勢力の侵攻により、領土が縮小した。そして、7世紀以降、軍政・行政の両側面において大きな変化が起きた。例えば、軍民両権を掌握する長官が地方を当地するテマ制が挙げられる。
近年の研究では、テマ制は8世紀以降、成立していったという見方が有力である。しかし、日本のテマ制の研究では、この制度の成立は、政府による周辺勢力に対応するための改革ではなく、軍団による行政権の獲得によるものであると考えられている。また、8世紀初頭のテマ軍団の反乱が、テマ制の成立要因があったとする説もある。しかし、同時代の文献史料がほとんど現存しておらず、後世の史料に頼るほかない。
本発表では、文献史料だけでなく、軍に対する装備などの供給を担当していたと考えられているゲニコス・コンメルキアリオスの印章資料や都市遺跡などの考古資料等を用いることで、ビザンツ帝国における統治機構の変化について検討した。そこでは、7世紀中頃以降に、政府による防衛力強化を目的とした諸改革の中で、副次的に属州・都市規模の防衛意識が構築され、最終的に8世紀初頭のテマ制成立の要因へと繋がるという連続した動向を確認した。
2. 田中文庫選書委員会からのお知らせ
選書委員会では、史学史・歴史学理論に関する書籍を「田中文庫」として日々収集しています。収集にあたっては、会員の皆さまからの御意見や希望を受け付けております。
専攻を問わず、史学史・歴史学理論などに関する書籍についてお心当たりがございましたら
下記の住所または白山史学会事務局メールアドレス(hakusanshigakukai@gmail.com)までお知らせ下さいますようお願いいたします。
蔵書リストなどの詳細は白山史学会ホームページ「田中文庫」をご覧ください
(http://hakusan-shigaku.org/library.html)。
住所:東京都文京区白山5-28-20
東洋大学文学部史学科共同研究室内白山史学会選書委員会
3. 新刊紹介
メルマガでは、田中文庫に新しく収められた書籍や会員が関係する新刊書籍を積極的に紹介
しております。
今回紹介する書籍は
長谷川岳男 著『スパルタ 古代ギリシャの神話と実像』(文芸春秋、2025年)となります。
◯長谷川岳男著『スパルタ 古代ギリシャの神話と実像』(文芸春秋、2025年)
本書は古代ギリシャのポリスの中で軍事国家として長期間君臨したスパルタ社会を近年進められてきた再検討を織り込んで紹介する意欲作である。また、スパルタの現実(=実像)とともに従来のスパルタに対するイメージ(=神話)を取り上げる叙述法式をとっている。
本書では、第1章から第6章でスパルタの繁栄から没落までの歴史が描かれており、同時期の著作などに見られるスパルタのイメージと研究から見えてくる実際の社会の様相はかけ離れたものではなく、一致している側面からスパルタ自身あるいは記録者の見せたかったスパルタの姿を見ることができる。第7章では、スパルタのブランド化がいかに行われてきたかが「受容史」として示されている。ここからは、スパルタの歴史が時代によって様々な側面から評価され、都合よく利用されてきた様子を見ることができる。
本書を通じて、歴史的な事象は必ずしも一定の指標から評価されるものではなく、時に政治のために、時に自己のアイデンティティの一部として虚構が事実となり、形を変えて利用されていくことがわかる。スパルタの例は、残された史料から「幻想」をはぎ取る難しさと歴史の果たす(ことができる)社会的な意義を私たちに問いかけているように感じられる。古代ギリシャを研究しようとする学生だけではなく、歴史を学ぶ多くの人に是非読んでいただきたい一冊である。
なお、本書の一部は2024年6月29日(日)に開催された白山史学会第60回大会において講演が行われ、その内容は講演録として『白山史学』第61号に掲載されている。合わせてご参照いただきたい。(林)
4.第62回大会・第54回総会について
白山史学会第62回大会および第54回総会は、6月27日(土) 午前と午後の2部制にて開催いたします。
対面およびオンライン配信にての開催となり、会場にお越しになることが難しい方も、オンライン配信をご活用いただければと思います。
報告タイトルや要旨、会場の詳細などは、4月下旬に発行予定の会報第132号[メルマガ11号]にて改めてご案内させていただきます。
◯開催日時:2026年6月27日(土) 午前の部 総会 10:00
午後の部 研究報告・講演 12:30
懇親会 18:30
◯研究報告
水谷 祐文 氏 [東洋大学大学院博士後期課程]
林 萌里 氏 [東洋大学大学院博士後期課程]
飛鳥馬 一峰先生 [東洋大学非常勤講師]
◯講演
朴澤 直秀 先生 [東洋大学教授]
長谷川 祐平 先生 [東洋大学助教]
奥村 哲 先生 [首都大学東京(東京都立大学)名誉教授]
昨年度の総会の盛況を受け、今大会および総会は、午前・午後の2部制となります。
なお今年度は、白山史学会が創立80年という節目を迎えるにあたり、懇親会でのOB・OG座談会をはじめ、様々な企画を起案中です。
大会後の懇親会にも奮ってご参加いただけますと幸いです。
5.編集後記
会報131号をお送りします。今号では2026年度卒論発表会、第62回大会・第54回総会の告知を主に掲載しております。会員の皆さまのお力添えもあり、白山史学会は今年、創立80周年という大きな節目を迎えることとなりました。日頃より白山史学会の活動にご理解ご協力いただき、改めて感謝申し上げます。今年度も変わらぬご愛顧のほどよろしくお願いいたします。 (企画局 小森)