白山史学会会員のみなさま
春光の候、会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。『会報』第127号(メルマガ6号)を送らせていただきます。
なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)まで、いつでもご連絡ください。
*******目次*******
1.2025年度卒論発表会のお知らせ
2.田中文庫選書委員会からのお知らせ
3.白山史学会ホームページに関するお知らせ
4.第61回大会・第53回総会について
5.編集後記
*****************
1.2025年度卒論発表会のお知らせ
2025年度卒論発表会は、5月10日(土)の午後1時半から、対面とオンライン配信をともに行うハイフレックス方式で開催されます。報告者と報告題目は以下のようになっています。
◯日本史分野 伊藤直さん 「島津斉彬と明治維新」
◯東洋史分野 山田美菜さん 「清代の長江中流域における米穀流通」
◯西洋史分野 夏井颯太さん 「オートヴィル朝シチリア王国の異文化共生と宗教的寛容」
対面参加の会場については、決定後にあらためてお知らせいたします。
対面、オンラインとも、事前登録なしでどなたでもご参加いただけます。
会場にお越しになることが難しい方も、もしよろしければぜひオンライン配信をご視聴ください。オンライン配信のURLは以下です。
・白山史学会のオンライン配信にはZoomを使用いたします。
・オンラインで参加される方が当日配布資料をダウンロードするためのクラウドストレージ・アドレスは発表会当日お知らせします。
各報告の要旨は以下の通りです。
◯ 伊藤直「島津斉彬と明治維新」
江戸後期、欧米列強の接近とアヘン戦争での清の敗北が日本に危機感をもたらし、鎖国政策が揺らいでいた。島津斉彬は薩摩藩11代藩主として、西洋技術の導入や幕政への働きかけを行い、富国強兵を目指した活動を行っていた。そこで本論文では、斉彬の行動が日本の幕末期、延いては明治維新にどう影響したのかを調査した。斉彬は、集成館事業により薩摩藩の工業技術を強化した。これが明治維新期に蒸気船保有数で優位性を生み、軍事・物流面で貢献した。また、琉球での異国船対応やペリー来航では、幕府へ提言を行い、その人脈を駆使し、影響力を発揮した。特に琉球問題に対する斉彬の柔軟な外交戦略は特筆すべきものがあり、その対応が後の和親条約に反映された。このことから、斉彬の政治活動は彼の没後の明治維新への道を開いたと評価した。
斉彬の技術導入と政治的活動は近代化の基盤を築き、その思想は死後も継承された。よって、斉彬の行動は明治維新の礎となったと結論付けた。
◯ 山田美菜「清代の長江中流域における米穀流通」
清前半期の湖南・湖北両省、通称「湖広」は、穀物生産地として長江下流域に主穀を移出した反面、食糧不足が生じ他の土地から米穀を搬入する状況が見られた。特に湖北省は地理的な要因によって米穀ではなく棉花・棉布が主要な生産品であり、湖北省は周辺の米穀生産地である湖南・四川省の三省間で棉布・米の売買による相互補完関係を成立させることで自省内に食用米を流通させていた。そうした地域市場圏があったにもかかわらず、湖南地域も含めた湖広の米不足は解決していなかった。
本卒業論文では、湖広における米穀需要の要因は自然条件ではなく米穀市場の構造に素因があると考え、清初から中期にかけての市場と当局による食糧政策にもとづく米穀流通の変化に注目して湖広の米穀需要の原因を研究した。
3章からなる卒論での分析作業を経て、清前半期の湖広における米穀需要の原因は、銀の流出による銭貴穀賤現象、および国家による集中買い付け行為にあると結論付けた。
◯ 夏井颯太「オートヴィル朝シチリア王国の異文化共生と宗教的寛容」
地中海の中心に存在するシチリア島は、古くはギリシアやローマ帝国、6世紀にはビザンツ帝国、9世紀にはイスラーム王朝の支配下に置かれ、多様な民族が根付いていた。その中で1130年に成立したオートヴィル朝シチリア王国は、ノルマン人支配の下で多様な民族が共生した多民族国家であり、カトリック文化、ギリシア文化、イスラーム文化が混在する独自の文化が形成された。
王国の特色として、異教徒・異邦人に特権を認め保護する方針を採っていたことがあり、このことから、シチリア王国研究では王国に宗教的寛容のイメージが付与されていることが多い。しかし実際に研究を進めると、王国の対異教徒・異邦人政策は宗教的寛容の言葉のみで片付けられるものではなく、実利的な目的の下で施行された政策であったことがわかる。
そこで本研究では、王国に付与された宗教的寛容のイメージと実際のシチリア王国の制度・社会との乖離に着目し、シチリア王国の多民族共生と宗教的寛容の実像を捉えていく。
2. 田中文庫選書委員会からのお知らせ
選書委員会では、史学史・歴史学理論に関する書籍を「田中文庫」として日々収集しています。蔵書リストなど詳細は白山史学会ホームページ「田中文庫」をご覧ください
(https://hakusan-shigaku.org/library.html)。
田中文庫で2024年度に新規に購入した図書のうち、以下2点について、その内容を史学専攻院生が簡潔に紹介いたします。
◯會田康範・駒田和幸・島村圭一編『「歴史的思考」へのいざない 人びとをつなぐ歴史の営み』戎光祥出版 2024 年
………社会科は暗記科目である――歴史学を専攻していれば、このように考えることはほとんどないだろうが、一般的には依然として暗記科目として認知されている。しかし、平成29年(2017)に改訂された学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」の導入が謳われて以降、各教科で思考力の育成を重視した授業展開がめざされるようになっている。本書は、このような学校教育の変化を受けて、令和2年(2020)から開催されてきた「歴史的思考研究会」の成果をもとにした書籍である。内容は、歴史的思考について考える際に意識するべきことや、歴史的思考力を育成するための授業実践、これまで歴史教育に携わってきた方々へのインタビューなどがまとまっており、歴史系の科目を担当する学校教員や教員をめざしている学生へ向けたものとなっている。けれども、ほんらい教育とは学校教育に限定されるものではないだろう。学習指導要領でも図書館・博物館の活用がめざされているように、司書・学芸員など、広く歴史教育に携わる人々に手に取っていただきたい書籍である。(岸野)
◯小澤実・佐藤雄基編『史学科の比較史 歴史学の制度化と近代日本』勉誠出版、2022年
本書は修史事業が開始された1869年から1945年に至るまでの、近代日本における史学科(歴史研究機関を含む)の歴史を比較史的アプローチから史学科の展開と特徴について述べたようとしたものである。
これまで史学科を対象とした研究は大学史や所属する著名な歴史家の伝記研究などによって一定の情報が蓄積されている。これらの先行研究の成果を踏まえ、本書では東京帝国大学、同史料編纂所、京都帝国大学、東北帝国大学、九州帝国大学、京城帝国大学・台北帝国大学・建国大学、東京商科大学(現一橋大学)、広島文理大学(現広島大学)、早稲田大学、慶応大学、立教大学、龍谷大学、皇典講究所・國學院大學の14大学2研究機関を取り上げ、それぞれの大学のカリキュラムや卒業者数など具体的な史料をもとに、各大学における史学科の変遷と史学科卒業生が果たした役割などを論じている。各大学の分析軸は大学ごとの特色を反映しているため、一定ではない。しかし、いくつかの大学の史学科の在り方を比較してみると歴史学を教える教員育成のための研究大学であった東京帝国大学(および京都帝国大学)の在り方と後続の帝国大学の抱えた課題、教育の「大衆化」によって史学科の学生たちによるコミュニティから作られた独特の「研究室」カルチャーが明治末期に構想された「研究室」とは形を変えながら、現在まで続いているなど興味深い史学科の歴史を知ることができる。
本書は明治~昭和期の教育者や大学史について学びたい人のみならず、同時期における日本の歴史教育や史学科で身に付けた力をどのように社会に活かすのか、その道に迷っている学部生にも役立つ書籍であろう。(林)
3. 白山史学会ホームページに関するお知らせ
白山史学会ウェブサイトでは、これまでに刊行された『白山史学』掲載論文の一覧や、今後の活動予定、過去のメルマガ(会報)等を掲載しています(https://hakusan-shigaku.org/index.html)。お手すきのときにぜひご覧下さい。なお、サイトの安全性を高めるため、SSLサーバー証明書を導入し、URLをhttpsに変更しました。
4.第61回大会・第53回総会について
白山史学会第61回大会および第53回総会は、6月28日(土)午後1時半からハイフレックス方式で開催いたします。報告タイトルや要旨、会場、オンライン参加用のURLなど、詳細は次回以降のメルマガであらためてお知らせしますが、ご報告・ご講演いただくのは以下の方々です。
◯研究報告
岸野 達也 さん [日本中世史、大学院博士後期課程]
小林 栄輝 さん [中国古代史、大学院博士後期課程]
◯講演
白川部 達夫先生(東洋大学名誉教授)
石橋 崇雄先生(元国士舘大学教授、元東洋大学非常勤講師)
5.編集後記
会報127号をお送りします。今号では2025年度卒論発表会、第61回大会・第53回総会の告知を主に掲載しております。白山史学会ウェブサイトでも『白山史学』掲載論文の一覧に加え、過去のメルマガのアーカイブがご覧いただけるようになりました。ご参考となりましたら幸甚です。今後とも会員の皆さまのお力となれるよう成長を続けて参りますので、よろしくお願い申し上げます。(企画局長 小森)