2025年4月1日火曜日

『白山史学会会報』第127号 [メルマガ6号] 2025年4月2日

白山史学会会員のみなさま


春光の候、会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。『会報』第127号(メルマガ6号)を送らせていただきます。

なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)まで、いつでもご連絡ください。


*******目次*******

1.2025年度卒論発表会のお知らせ

2.田中文庫選書委員会からのお知らせ

3.白山史学会ホームページに関するお知らせ

4.第61回大会・第53回総会について

5.編集後記

*****************

1.2025年度卒論発表会のお知らせ


2025年度卒論発表会は、5月10日(土)の午後1時半から、対面とオンライン配信をともに行うハイフレックス方式で開催されます。報告者と報告題目は以下のようになっています。

◯日本史分野 伊藤直さん  「島津斉彬と明治維新」       

◯東洋史分野 山田美菜さん 「清代の長江中流域における米穀流通」

◯西洋史分野 夏井颯太さん 「オートヴィル朝シチリア王国の異文化共生と宗教的寛容」


対面参加の会場については、決定後にあらためてお知らせいたします。

対面、オンラインとも、事前登録なしでどなたでもご参加いただけます。

会場にお越しになることが難しい方も、もしよろしければぜひオンライン配信をご視聴ください。オンライン配信のURLは以下です。


https://x.gd/pt6ON


・白山史学会のオンライン配信にはZoomを使用いたします。

・オンラインで参加される方が当日配布資料をダウンロードするためのクラウドストレージ・アドレスは発表会当日お知らせします。


各報告の要旨は以下の通りです。

◯ 伊藤直「島津斉彬と明治維新」 

 江戸後期、欧米列強の接近とアヘン戦争での清の敗北が日本に危機感をもたらし、鎖国政策が揺らいでいた。島津斉彬は薩摩藩11代藩主として、西洋技術の導入や幕政への働きかけを行い、富国強兵を目指した活動を行っていた。そこで本論文では、斉彬の行動が日本の幕末期、延いては明治維新にどう影響したのかを調査した。斉彬は、集成館事業により薩摩藩の工業技術を強化した。これが明治維新期に蒸気船保有数で優位性を生み、軍事・物流面で貢献した。また、琉球での異国船対応やペリー来航では、幕府へ提言を行い、その人脈を駆使し、影響力を発揮した。特に琉球問題に対する斉彬の柔軟な外交戦略は特筆すべきものがあり、その対応が後の和親条約に反映された。このことから、斉彬の政治活動は彼の没後の明治維新への道を開いたと評価した。

 斉彬の技術導入と政治的活動は近代化の基盤を築き、その思想は死後も継承された。よって、斉彬の行動は明治維新の礎となったと結論付けた。


◯ 山田美菜「清代の長江中流域における米穀流通」

 清前半期の湖南・湖北両省、通称「湖広」は、穀物生産地として長江下流域に主穀を移出した反面、食糧不足が生じ他の土地から米穀を搬入する状況が見られた。特に湖北省は地理的な要因によって米穀ではなく棉花・棉布が主要な生産品であり、湖北省は周辺の米穀生産地である湖南・四川省の三省間で棉布・米の売買による相互補完関係を成立させることで自省内に食用米を流通させていた。そうした地域市場圏があったにもかかわらず、湖南地域も含めた湖広の米不足は解決していなかった。

 本卒業論文では、湖広における米穀需要の要因は自然条件ではなく米穀市場の構造に素因があると考え、清初から中期にかけての市場と当局による食糧政策にもとづく米穀流通の変化に注目して湖広の米穀需要の原因を研究した。

 3章からなる卒論での分析作業を経て、清前半期の湖広における米穀需要の原因は、銀の流出による銭貴穀賤現象、および国家による集中買い付け行為にあると結論付けた。


◯ 夏井颯太「オートヴィル朝シチリア王国の異文化共生と宗教的寛容」

 地中海の中心に存在するシチリア島は、古くはギリシアやローマ帝国、6世紀にはビザンツ帝国、9世紀にはイスラーム王朝の支配下に置かれ、多様な民族が根付いていた。その中で1130年に成立したオートヴィル朝シチリア王国は、ノルマン人支配の下で多様な民族が共生した多民族国家であり、カトリック文化、ギリシア文化、イスラーム文化が混在する独自の文化が形成された。

 王国の特色として、異教徒・異邦人に特権を認め保護する方針を採っていたことがあり、このことから、シチリア王国研究では王国に宗教的寛容のイメージが付与されていることが多い。しかし実際に研究を進めると、王国の対異教徒・異邦人政策は宗教的寛容の言葉のみで片付けられるものではなく、実利的な目的の下で施行された政策であったことがわかる。

 そこで本研究では、王国に付与された宗教的寛容のイメージと実際のシチリア王国の制度・社会との乖離に着目し、シチリア王国の多民族共生と宗教的寛容の実像を捉えていく。


2. 田中文庫選書委員会からのお知らせ


選書委員会では、史学史・歴史学理論に関する書籍を「田中文庫」として日々収集しています。蔵書リストなど詳細は白山史学会ホームページ「田中文庫」をご覧ください

(https://hakusan-shigaku.org/library.html)。

田中文庫で2024年度に新規に購入した図書のうち、以下2点について、その内容を史学専攻院生が簡潔に紹介いたします。


◯會田康範・駒田和幸・島村圭一編『「歴史的思考」へのいざない 人びとをつなぐ歴史の営み』戎光祥出版 2024 年 

………社会科は暗記科目である――歴史学を専攻していれば、このように考えることはほとんどないだろうが、一般的には依然として暗記科目として認知されている。しかし、平成29年(2017)に改訂された学習指導要領で「主体的・対話的で深い学び」の導入が謳われて以降、各教科で思考力の育成を重視した授業展開がめざされるようになっている。本書は、このような学校教育の変化を受けて、令和2年(2020)から開催されてきた「歴史的思考研究会」の成果をもとにした書籍である。内容は、歴史的思考について考える際に意識するべきことや、歴史的思考力を育成するための授業実践、これまで歴史教育に携わってきた方々へのインタビューなどがまとまっており、歴史系の科目を担当する学校教員や教員をめざしている学生へ向けたものとなっている。けれども、ほんらい教育とは学校教育に限定されるものではないだろう。学習指導要領でも図書館・博物館の活用がめざされているように、司書・学芸員など、広く歴史教育に携わる人々に手に取っていただきたい書籍である。(岸野)


◯小澤実・佐藤雄基編『史学科の比較史 歴史学の制度化と近代日本』勉誠出版、2022年

 本書は修史事業が開始された1869年から1945年に至るまでの、近代日本における史学科(歴史研究機関を含む)の歴史を比較史的アプローチから史学科の展開と特徴について述べたようとしたものである。

 これまで史学科を対象とした研究は大学史や所属する著名な歴史家の伝記研究などによって一定の情報が蓄積されている。これらの先行研究の成果を踏まえ、本書では東京帝国大学、同史料編纂所、京都帝国大学、東北帝国大学、九州帝国大学、京城帝国大学・台北帝国大学・建国大学、東京商科大学(現一橋大学)、広島文理大学(現広島大学)、早稲田大学、慶応大学、立教大学、龍谷大学、皇典講究所・國學院大學の14大学2研究機関を取り上げ、それぞれの大学のカリキュラムや卒業者数など具体的な史料をもとに、各大学における史学科の変遷と史学科卒業生が果たした役割などを論じている。各大学の分析軸は大学ごとの特色を反映しているため、一定ではない。しかし、いくつかの大学の史学科の在り方を比較してみると歴史学を教える教員育成のための研究大学であった東京帝国大学(および京都帝国大学)の在り方と後続の帝国大学の抱えた課題、教育の「大衆化」によって史学科の学生たちによるコミュニティから作られた独特の「研究室」カルチャーが明治末期に構想された「研究室」とは形を変えながら、現在まで続いているなど興味深い史学科の歴史を知ることができる。

 本書は明治~昭和期の教育者や大学史について学びたい人のみならず、同時期における日本の歴史教育や史学科で身に付けた力をどのように社会に活かすのか、その道に迷っている学部生にも役立つ書籍であろう。(林)


3. 白山史学会ホームページに関するお知らせ


白山史学会ウェブサイトでは、これまでに刊行された『白山史学』掲載論文の一覧や、今後の活動予定、過去のメルマガ(会報)等を掲載しています(https://hakusan-shigaku.org/index.html)。お手すきのときにぜひご覧下さい。なお、サイトの安全性を高めるため、SSLサーバー証明書を導入し、URLをhttpsに変更しました。


4.第61回大会・第53回総会について


白山史学会第61回大会および第53回総会は、6月28日(土)午後1時半からハイフレックス方式で開催いたします。報告タイトルや要旨、会場、オンライン参加用のURLなど、詳細は次回以降のメルマガであらためてお知らせしますが、ご報告・ご講演いただくのは以下の方々です。


◯研究報告

 岸野 達也 さん [日本中世史、大学院博士後期課程]

 小林 栄輝 さん [中国古代史、大学院博士後期課程]


◯講演

 白川部 達夫先生(東洋大学名誉教授) 

 石橋 崇雄先生(元国士舘大学教授、元東洋大学非常勤講師)


5.編集後記


会報127号をお送りします。今号では2025年度卒論発表会、第61回大会・第53回総会の告知を主に掲載しております。白山史学会ウェブサイトでも『白山史学』掲載論文の一覧に加え、過去のメルマガのアーカイブがご覧いただけるようになりました。ご参考となりましたら幸甚です。今後とも会員の皆さまのお力となれるよう成長を続けて参りますので、よろしくお願い申し上げます。(企画局長 小森)

2024年11月10日日曜日

『白山史学会会報』第126号[メルマガ5号]2024年11月11日

 白山史学会会員のみなさま


立冬の候、会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

『会報』第126号(メルマガ5号)を送らせていただきます。

なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)までいつでもご連絡ください。


*******目次*******

1.第61回大会・第53回総会のお知らせ

2.会務報告(今年度の活動状況)

3.田中文庫選書委員会からのお知らせ

4.白山史学会ホームページに関するお知らせ

5.会計報告

6.新刊紹介:岩下哲典著『山岡鉄舟・高橋泥舟』(ミネルヴァ書房、2023 年)

7.編集後記

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1.第61回大会・第53回総会のお知らせ

白山史学会第61回大会および第53回総会は、2025年6月末の土曜日の開催を予定しております。詳細につきましては、来春、メルマガ(会報)やホームページにてご案内さしあげます。どうぞ奮ってご参加ください。今後とも本会の活動にご支援を賜りますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

2.会務報告(今年度の活動状況)

◯第60回大会・第52回総会(2024年6月29日:ハイフレックス開催)

・研究報告 

「『播磨国風土記』と「郡的世界」の実像―播磨国揖保郡を中心として―」

東洋大学大学院科目等履修生 小倉草氏

「オスマン帝国における「3 月 31 日事件」(1909 年)に関する一考察―連隊上がりの将校について―」

東洋大学人文科学総合研究所客員研究員 矢本彩氏

・公開講演

「スパルタ 神話と実像」                                   東洋大学文学部教授 長谷川岳男氏

「紫式部と実資・道長」                      国際日本文化研究センター名誉教授 倉本 一宏氏

◯常任委員会定例会(対面)

 7月22日[月](第1回常任委員会)

10月24日[木](第2回常任委員会)       

◯常任委員会の構成

会長:鈴木道也

副会長:千葉正史

庶務局長:岸野達也(D1)

編集局長:林萌里(D2)

会計局長:船山日向子(M1)

企画局長:小森望夢(M1)

選書小委員会代表:水谷祐文(M1)

月例会担当部局代表:水谷祐文

庶務:水谷祐文、山内菜々子(学部2年:日本史)、大山恭平(学部2年:東洋史)、由木貴(学部2年:西洋史)

会計監査:後藤はる美、木下聡

3.田中文庫選書委員会からのお知らせ

選書委員会では、「田中文庫」として史学史・歴史学理論に関する書籍を日々収集しています。収集にあたっては、会員の皆さまからの御意見や収集希望書籍を受け付けております。専攻を問わず、史学史・歴史学理論などに関する書籍についてお心当たりがございましたら、下記の住所、または白山史学会事務局メールアドレス(hakusanshigakukai@gmail.com)までお知らせ下さいますようお願いいたします。

なお、蔵書リストなど詳細は白山史学会ホームページ「田中文庫」をご覧ください(http://hakusan-shigaku.org/library.html)。

住所:東京都文京区白山5-28-20

東洋大学文学部史学科共同研究室内白山史学会選書委員会

4.白山史学会ホームページに関するお知らせ

白山史学会ホームページでは、これまでに刊行された『白山史学』掲載論文の一覧や、今後の活動予定、過去のメルマガ(会報)等を掲載しています(http://hakusan-shigaku.org/index.html)。

お手すきのときにぜひご覧下さい。

5.会計報告

先日開催された第52 回総会において2024年度一般会計予算案が承認されましたので、会員の皆さまにご報告申し上げます。

◯2024年度白山史学会一般会計

収入の部

繰越金:¥6,684,225

学生会員費:¥834,000

一般会員費:¥224,000

雑誌売上費:¥2,000

広告費:¥20,000

銀行利息:¥50

収入合計:¥7,764,275

支出の部

『白山史学』印刷費:¥410,245

会報等印刷費:¥10,000

事務費:¥20,000

通信連絡費:¥30,000

銀行等振込手数料:¥3,000

月例会費:0

大会費:¥70,000

会議費:0

インターネット関連諸経費:¥7,000

『白山史学』バックナンバーPDF化経費:¥12,982 

納税:¥10,000

支出合計:¥573,227

次年度繰越金:¥7191,048

◯2024年度白山史学会特別会計決算

収入の部

繰越金:¥595,694

銀行利息:¥6

雑収入:¥180

収入合計:¥595,880

支出の部

書籍代:¥10,000

文具代(ラベル代等):¥5,000

支出合計:¥15,000

次年度繰越金:¥580,880

6.新刊紹介

メルマガでは、会員が関係する新刊書籍を積極的に紹介していきたいと考えています。今回の対象書籍は、岩下哲典著『山岡鉄舟・高橋泥舟』(ミネルヴァ書房、2023 年)です。

なお、雑誌『白山史学』には会員書籍の書評も掲載されていますので、そちらもぜひご覧ください。

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 当書は、勝海舟・山岡鉄舟・高橋泥舟の幕末三舟の内、鉄舟と泥舟を二舟として取り上げた評伝である。著者の岩下哲典教授は、当書執筆までに『高邁なる幕臣高橋泥舟』『江戸無血開城』『江戸無血開城の史料学』などの関連書籍を執筆しており、当書はこれらの延長線上に位置するといえよう。

 内容は、鉄舟と泥舟の生涯に渡る解説は勿論、第6章にて禅・仏教、第7章にて書と武芸、第八章にて家族と弟子・知人たちと、二舟にとって重要な事項について幾つかの章を割り当てている。また、はしがきのii頁を読むと「鉄舟・泥舟を少なくとも海舟ぐらいにしたいと思っている」とあり、当書の目的が二舟の重要性を再評価してもらいたいということが理解できる。二舟の関係性として、15頁に「泥舟が表の時は鉄舟が裏方、鉄舟が表に出る時は泥舟が裏方、そうして義兄弟で激動を乗り切った。その結節点には、泥舟妹にして鉄舟妻英子がいた」とある。現在では江戸無血開城の際の活躍により、鉄舟が泥舟よりも前に出ている印象を受けるが、この一文は二舟の関係性を如実に表している。

 泥舟の重要性については他にも、江戸無血開城の時期において、35頁にて「徳川家の当主慶喜の絶対的信頼のもとにこの難局に当たったのは泥舟である。もっといえば泥舟こそが、海舟や鉄舟の働く場を提供したのである。なにしろ慶喜の信頼するのは泥舟ただひとりだったからである。すなわち、慶喜の信頼の元、慶喜の中奥には泥舟が、江戸城の大奥には天璋院と和宮が、表には海舟がいた。そのような役割分担になったということであろう」とある。中奥(なかおく)とは、「江戸城殿舎の表の一部で、将軍の居住する区域」(『日本国語大辞典』)であり、表(おもて)とは「謁見その他の儀式を行う広間と、日常諸役人が詰めて執務する諸座敷などからなり、幕府の中央政庁としての機能をもっている」(『国史大辞典』)場である。江戸無血開城は、関連した人物各々が各々の立場から役割を分担して成し遂げた業績といえよう。

 終章186頁では、読者にとって幕末三舟の中心となる人物は誰であろうか、といった文章で本文を終了させている。当書を読み、各々が各々毎に誰が中心であるか決めていただきたい。(和田勤 [本学会会員] )

7.編集後記

会報126 号をお送りします。本号では、会務報告や先日の総会で承認された2024年度予算に加え、新刊紹介も掲載いたしております。今後とも白山史学会の活動にご理解ご協力いただきますよう、よろしくお願いします。 (企画局:小森望夢)


2024年6月3日月曜日

『白山史学会会報』第125号[メルマガ4号]2024年6月4日

白山史学会会員のみなさま

会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

『会報』第125号(メルマガ4号)を送らせていただきます。


なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)までいつでもご連絡ください。

*******目次*******

1. 白山史学会第60回大会・第52回総会のお知らせ

2. 会務報告

3. 田中文庫選書委員会からのお知らせ

4. 白山史学会ホームページに関するお知らせ

5. 常任委員選挙に関するお知らせ

6. 新刊紹介

7. 『白山史学』第61号原稿募集のお知らせ

8. 編集後記

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1. 白山史学会第60回大会・第52回総会のお知らせ

白山史学会第60回大会・第52回総会は、6月29日(土)の午後1時半から対面およびオンライン配信のハイフレックス方式で開催されます。プログラムは以下の通りです。

◯公開講演

「スパルタ―神話と実像―」  東洋大学文学部史学科教授 長谷川 岳男氏

「紫式部と道長・実資」 国際日本文化研究センター名誉教授 倉本 一宏氏

◯研究発表

「『播磨国風土記』と「郡的世界」の実像―播磨国揖保郡を中心として―」

                     東洋大学大学院科目等履修生 小倉 草氏

「オスマン帝国における「3月31日事件」(1909年)に関する一考察

                          ―連隊上がりの将校について―」

                    東洋大学人間科学総合研究所客員研究員 矢本 彩氏

◯会場:6317教室(6号館3階)

◯配信URL: https://meet.google.com/kse-tknq-itk

・対面、オンラインとも事前登録なしでどなたでもご参加いただけます。会場にお越しになることが難しい方も、もしよろしければぜひご視聴ください。なお、オンラインで参加される方が当日配布資料をダウンロードするためのクラウストレージトレージ・アドレスは当日お知らせします。研究発表の要旨は以下の通りです。

[小倉報告要旨]

 古代の播磨国は、倭王権の中枢部である畿内の西の周縁部にあり、畿内と吉備や出雲等の間に位置し、瀬戸内海を通じて北九州や朝鮮半島へも繋がるという場所に位置していた。揖保郡は播磨国の西部にあり、瀬戸内海に面しており、『播磨国風土記』に渡来の人々を始めとした列島各地からの移住記事が多くみられる地域である。揖保郡の律令制下の郡的世界の実像を、『播磨国風土記』と考古学の成果をもとに探った。

 『播磨国風土記』では、里によって記される氏族は異なり、揖保郡全域を統括しているような氏族は見られないことから、里ごとに祖先の系譜が異なる氏族が居たことが窺われた。さらに、里の記載順から、3つの群に分かれて支配されていた可能性が高いことが推定されたが、地形や古墳の状況もそれを裏付けるものであった。さらに、古墳や古代寺院の動向から、7世紀後半から8世紀の初めごろには、複数の郡内における最有力氏族と多くの中小氏族が各里に並立していたことが推定された。

 これらのことから、揖保郡は一括支配されていたのではなく、3つの群に分けて行政支配され、3つの群の中においても複数の渡来系を含む有力な氏族が並立していたという郡的世界であった可能性が高いことが導き出された。これは、栄原永遠男氏が、播磨国賀茂郡で、既多寺大智度論の知識にみられる氏族の配置から、針間国造・針間直は4つの小集団に分かれ、それぞれ他氏と階層的な関係を結び、賀茂郡内に地域的に分かれて盤踞していたことを指摘したことと同様の結果と言える。また、7世紀後半に最有力な古墳が築造された地域の多くでは、6世紀の後半頃には前方後円墳や渡来系の石室や副葬品を持つ古墳、7世紀には有力な古墳が造られ、その後も競うように各里で古墳群や寺院が造られている。これは、森公章氏が指摘した、律令国家成立以前から当該地域に歴史的支配を築いていた在地の中小豪族が拮抗するという多極的な郡的世界が展開されていたことも窺える結果であった。

 『播磨国風土記』が編纂された時期には、揖保郡は3つの群に分割して行政支配されていた可能性が高いことが分かったが、孝徳天皇の時には宍禾郡が揖保郡から分割され、中世には揖東郡と揖西郡の2つに分かれている。今後、この郡の変遷と当時の地域支配体制との関連について調べていくとともに、播磨国の他の郡についても同様に郡的世界の実像を探っていきたいと考える。

[矢本報告要旨]

 オスマン帝国(1299頃~1922年)で、1908年7月に青年トルコ人革命が発生した。この革命により、憲法の復活が宣言され、第二次立憲政(İkinci Meşrutiyet)がはじまった。この革命の主導者は、青年トルコ人であり、「統一と進歩協会」所属の一部の将校だった。青年トルコ人とは、憲法の復活を目指す若い知識人を指す。「統一と進歩協会」による革命後の政治体制は、必ずしもすべてのオスマン臣民に受け入れられたわけではなかった。革命直後から、デモやストライキという形でその不満が表面化していた。

 1909年4月、帝都イスタンブルで「3月31日事件(31 Mart Olayı)」が発生した。先行研究において、この事件は現状に不満を抱く兵士の反乱と認識され、先の青年トルコ人革命に対する「反革命」という評価も得てきた。事件の首謀者として処刑されたのは、デルヴィーシュ・ヴァフデティ(Derviş Vahdeti, 生没1870-1909年)である。彼は『火山(Volkan)』紙の出版権所有者であり、主筆を務めた。『火山』紙がシャリーアを重視したため、事件が「イスラーム主義」によるものとみなされることもあった。しかしながら、同事件は「イスラーム主義」のみに起因するものではなかった。多様な立場の人々が関わっていたため、先行研究では、事件の原因について大きく三つに分けて論じられてきた。一つ目が「統一と進歩協会」と彼らに対抗する勢力による青年トルコ人内部の勢力争い。二つ目がかつてマドラサの学生に課されていた徴兵免除試験の再開問題。そして、三つ目が陸軍内部の部隊再編と大量解雇に端を発する士官学校出身将校と連隊上がりの将校の対立である。

 報告者はこれまで『火山』紙の分析を中心に、ヴァフデティの言動を明らかにしてきた。また「3月31日事件」後の裁判記録の分析から、処罰された者の多くが軍人(36%)であり、特に極刑に処された者の約80%が軍人であったことを指摘した。同事件を決起したのは軍人であり、また事件を鎮圧したのも軍人であったが、先行研究において、連隊上がりの将校に関してはその動向が明らかにされてこなかった。

 本報告では、「3月31日事件」の中で重要な役割を担っていた軍人に焦点をあてる。まず、連隊上がりの将校に関する『火山』紙における評価を明らかにし、また他の定期刊行物や公文書史料を元に、事件前後の連隊上がりの将校らの動向を分析する。同事件の原因ともいわれた士官学校出身将校との対立問題を明らかにする一助とする。

2. 会務報告

今年度の活動状況について、以下の通りお知らせいたします。

◇新入生歓迎講演「歴史学への招待」(2024年4月4日)

・「「山岡鉄舟」とは何者なのか ~私の歩んだ「歴史学」への道のり~」

           東洋大学大学院文学研究科史学専攻博士後期課程 本林 義範氏

◇卒業論文発表会(2024年5月11日)

・「貴族の世の陰と陽 ―陰陽師と女性との関わりから―」  本学卒業生 小森  望夢氏

・「ウマイヤ朝におけるカリフの継承 ―スフヤーン家のカリフ再考―」 

                            本学卒業生 大城  清夏氏

・「ウィリアム・ペンの「聖なる実験」」          本学卒業生 稲坂  夏実氏

◇常任委員会

常任委員会を以下の日程で開催いたしました。第1回(7月28日)、第2回(10月6日)、第3回(11月10日)、第4回(12月8日)、第5回(3月4日)、第6回(4月17日)、第7回(5月24日)。

3. 田中文庫選書委員会からのお知らせ

選書委員会では、「田中文庫」として史学史・歴史学理論に関する書籍を日々収集しています。「田中文庫」の書籍について、選書委員会では会員の皆様からの御意見、収集希望書籍を日々受け付けております。専攻を問わず、史学史・歴史学理論などに関する書籍についてお心当たりがございましたら、下記の住所、または白山史学会メールアドレスまでお知らせ下さいますようお願いいたします。蔵書リストなど、詳細は白山史学会ホームページ「田中文庫」をご覧ください(http://hakusan-shigaku.org/library.html)。

・住所:112-8606東京都文京区白山5-28-20東洋大学文学部史学科共同研究室内 

    白山史学会選書委員会

・E-mail:hakusanshigakukai@gmail.com

4. 白山史学会ホームページに関するお知らせ

白山史学会(http://hakusan-shigaku.org/index.html)では『白山史学』掲載論文の一覧や今後の活動予定等を掲載しております。また機関リポジトリ収録の『白山史学』バックナンバーへのリンクもありますので、ぜひご覧下さい。

本会報[メルマガ]も学会ホームページからバックナンバーの閲覧が可能になりました(https://hakusanshigakukai.blogspot.com/)。


5. 常任委員選挙に関するお知らせ

 白山史学会では、白山史学会常任委員次期候補者の立候補・推薦を総会の二週間前から受け付けいたします。候補者の届け先は下記となっております。なお応募や推薦は総会当日も受け付けます。

【届け先住所・メールアドレス】  

・住所:112-8606東京都文京区白山5-28-20東洋大学文学部史学科共同研究室内 

        白山史学会 

・E-Mail : hakusanshigakukai@gmail.com

6. 新刊紹介

メルマガでは、今後会員が関係する新刊書籍を積極的に紹介していきたいと考えています。今回の対象書籍は、岩下哲典・中澤克昭・竹内良男・市川尚智編『信州から考える世界史』(えにし書房、2023年)です。なお雑誌『白山史学』には会員書籍の書評も掲載されていますので、そちらもぜひご覧ください。

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 わたくしごとで恐縮だが、私は2021年5月に伊那へ旅行に行ったおり、たまたま立ち寄った満蒙開拓平和祈念館で、偶然にも語り部定期講演に参加する機会を得た。本書でも触れられているように、このあたりは長野県内でもっとも多い、約8400人が満蒙開拓団として満洲へと送出ている地域である。満蒙開拓平和祈念館は、満蒙開拓の歴史を忘れないために、定期的に当事者となった方の講演会を開催している。

 さて、3年経った今でも忘れられない、「2歳のときの話をしろと言われても無理」という語り部の衝撃発言があったこの講演会では、満洲での生活とロシア進攻からの逃避行について語られた。特に印象的だったことは、満洲での生活状況を話すなかで、他民族のことにいっさい触れられなかったことであった。満洲国は「五族協和」をスローガンに掲げていたものの、その実態の一端が垣間見えたように思われた。

 このように信州は、大陸との関係が深く、さらには記憶と忘却とが混在した特徴的な地域である。その信州を起点として世界の歴史との関係を紹介する本書は、ともすれば忘れがちな「世界」の存在に、あらためて目を向けさせてくれるものといえよう。

 本書は、「古代・中世」・「近世」・「近代」・「現代」の4つに時期を区分しつつ、それらのなかで特徴的な、ヒト・モノ・できごとを取り上げ、世界とのかかわりに留意しながら紹介するというスタイルをとっている。特に「です・ます」調の文体を採用している点が特徴で、幅広い読者に語り掛けていくという姿勢を貫いている。

 「はじめに」で、「本書を読まれる皆さんにお願いしたいのは、自分のこととして、地域の歴史をとらえていただきたい」と注意を促しているように、多くの章では、地域の歴史を起点にしながら、現在に生きる私たちがどのように歴史と向き合っていくかということを考えていけるような内容となっている。例えば、岩下哲典「豊臣秀吉の「村切り」と「たのめの里」」の章では、JR中央本線小野駅近くにある小野神社と矢彦神社が小川を挟んで両隣にあるのに、小野神社は塩尻市北小野地区だが、矢彦神社は同所よりも南にある唐沢川以南の辰野町小野地区の飛び地となっていると紹介している。そしてその原因は豊臣秀吉による「村切り」にあるのではないか、として現代と過去とを結びつけていく。

 率直に言って、私は本書で書かれていることが、知らないことばかりで非常に新鮮であった。そして今まで漫然と信州へと行って見てきたものが、実は非常に歴史的な経緯の結果として存在していることに、いまさらながら気づかされた。欲を言えば、一部の著名人ではなく、信州に住む人びとがどのように生活してきたかについて、もう少し掘り下げれば、より多くの読者の共感や興味を引き起こせたのではないかとも思う。にもかかわらず、本書が扱う内容は幅広く、読者に歴史に興味を持ってもらうための役割を大いに果たしていると思う。本稿を読まれた方はぜひ、同書を手に取って、現在から地域の歴史に触れ、世界とのかかわりについて、考えを巡らせてもらいたい。 (中村祐也[庶務局長])

7. 『白山史学』第61号原稿募集のお知らせ

 本会会誌『白山史学』第61号(2025年3月発行予定)の投稿原稿を募集しております。投稿規定は下記の通りとなりますので、ご参照ください。

《論文》

・400字詰原稿用紙縦書で、80枚以内(注:図表を含む)。

・図表は止むを得ないものに限り、5点以内。

・初校は筆者にお願いしますが、校正は誤植訂正に限り、書き直し、追加などはご遠慮ください。

・必ず欧文タイトルを付してください。

・デジタル・データで入稿する場合は、ファイル形式を明記し、他にテキストファイルとA4縦用紙に、54文字×19行で縦書きに打ち出したものを付してください。

《研究ノート》

・400字詰原稿用紙縦書で、30枚程度(注:図表を含む)。その他は論文と同様です。

*《論文》《研究ノート》共に、投稿は会員の方のみに限ります。投稿締切は2024年10月31日(当日消印有効)です。採否については編集委員会の議を経て、常任委員会の責任において11月末頃にお知らせします。

なお、本会メールアドレス(hakusanshigakukai@gmail.com)への電子投稿(メール添付)を推奨します。

*本誌に掲載された論文等の著作権は本会に帰属するものとします。ご自身の著書に収録するなどの際には、本会にお知らせください。

<編集委員会> 岩下哲典、大豆生田稔、木下聡、鈴木道也、高橋圭、千葉正史、西村陽子、長谷川岳男、朴澤直秀、村田奈々子、森公章(五十音順)

8. 編集後記

 本号は、6月29日に開催いたします白山史学会第60回大会・第52回総会の特集号です。今大会では、公開講演を長谷川岳男先生と倉本一宏先生にお願いいたしました。また、東洋大学大学院科目等履修生の小倉草氏および東都リハビリテーション学院非常勤講師の矢本 彩氏に研究報告をお願いしました。ぜひご参加ください。大変お忙しい中、講演依頼をお引き受けくださいました長谷川岳男先生、倉本一宏先生、研究報告をお引き受けくださいました小倉草氏、矢本彩氏に改めてお礼を申し上げます。今後とも本会の活動にご理解ご協力賜りますよう、よろしくお願いいたします。 (庶務局長 中村)


2024年5月4日土曜日

『白山史学会会報』第124号 [メルマガ3号] 2024年4月26日

 白山史学会会員のみなさま


会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。

『会報』第124号(メルマガ3号)を送らせていただきます。

なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)までいつでもご連絡ください。


1. 2024年度卒業論文発表会について

『会報』第123号(メルマガ2号)でお知らせした通り、5月11日(土)午後1時30分〜午後4時15分に2024年度の卒業論文発表会が開催されます。開催形態は対面とオンライン配信をともに行うハイフレックス方式です。対面の会場が決まりましたのであらためてご連絡いたします。対面、オンラインとも事前登録なしでどなたでもご参加いただけます。

・対面開催の会場:6317教室(白山キャンパス6号館3階)

・オンライン配信のミーティング・リンク:https://meet.google.com/kse-tknq-itk

*今回から白山史学会のオンライン配信にはGoogleMeetを使用いたします。Google Meetにアクセスする方法は以下の通りです。

・パソコンの場合:お好きなWebブラウザの最新バージョンを使用してください。アプリのダウンロードは必要ありません。

・スマートフォンまたはタブレットの場合:Google PlayやApp StoreでGoogle Meetモバイルアプリをダウンロードしてください。

・参加する際、Googleのアカウントを持っている場合は、 ①上記URLを開く、②カメラなどを設定する、③「今すぐ参加」をクリックする、ことでご参加いただけます。Googleのアカウントを持っていない場合は、①上記URLを開く、②カメラなどを設定する、③名前を入力して「参加をリクエスト」、④参加承認、でご参加いただけます。

*なお、オンラインで参加される方が当日配布資料をダウンロードするためのクラウドストレージ・アドレスは当日お知らせします。

『白山史学会会報』第123号 [メルマガ2号] 2024年4月5日

白山史学会会員のみなさま

会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
『会報』第123号(メルマガ2号)を送らせていただきます。

なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)までいつでもご連絡ください。

*紙媒体での配布を希望された方には同内容のものを郵送しています。

*******目次*******
1.2024年度卒論発表会のお知らせ
2.田中文庫選書委員会からのお知らせ
3.白山史学会ホームページに関するお知らせ
4.第60回大会・第52回総会について
5.編集後記
*****************

1.2024年度卒論発表会のお知らせ

2024年度卒論発表会は、5月11日(土)の午後1時半から、対面およびオンライン配信をともに行うハイフレックス方式で開催されます。報告者と報告題目は以下のようになっています。

日本史分野:小森望夢さん 「貴族の世の陰と陽 ―陰陽師と女性との関わりから― 」
東洋史分野:大城清夏さん 「ウマイヤ朝におけるカリフの継承―スフヤーン家のカリフ再考―」
西洋史分野:稲坂夏実さん 「ウィリアム・ペンの「聖なる実験」」

対面参加の会場については、決定後にあらためてお知らせいたします。
対面、オンラインとも事前登録なしでどなたでもご参加いただけます。
会場にお越しになることが難しい方も、もしよろしければぜひオンライン配信をご視聴ください。
オンライン配信のURLと参加方法は以下です。
今回から白山史学会のオンライン配信にはGoogleMeetを使用いたします。

-------ミーティング・リンクと参加方法-----------
・ミーティング リンク: https://meet.google.com/kse-tknq-itk
※Google Meetにアクセスする方法
・パソコンの場合:お好きなWebブラウザの最新バージョンを使用してください。アプリのダウンロードは必要ありません。
・スマートフォンまたはタブレットの場合:Google PlayやApp StoreでGoogle Meetモバイルアプリをダウンロードしてください。

※Google Meetでビデオ会議に参加する方法
・Googleのアカウントを持っている場合 : ①上記URLを開く、②カメラなどを設定する、③「今すぐ参加」をクリックする
・Googleのアカウントを持っていない場合 :①上記URLを開く、②カメラなどを設定する、③名前を入力して「参加をリクエスト」、④参加承認

----------------------------------------------------------------------------
なお、オンラインで参加される方が当日配布資料をダウンロードするためのクラウドストレージ・アドレスは当日お知らせします。

各報告の要旨は以下の通りです。
◯ 「貴族の世の陰と陽 ―陰陽師と女性との関わりから― 」小森望夢
 本研究では、平安時代を陰陽師と女性との関わりという視点から考察することで、両者の社会的・文化的イデオロギーを明らかにすることを目的とする。陰陽師は、平安の世の中で陰陽寮官人という職掌から一般名称である同業者集団へと変化し、活躍の場を祭祀・儀礼の場だけでなく、呪詛の場や病の場、出産の場と拡大していった。その背景には律令制の崩壊が大きく起因しており、陰陽師は社会的に認知されると共に、日常生活の一部として人々に寄り添っていった。人々の陰陽師への期待は、占いやおまじない程度のものから、一縷の希望にまで膨張し、司祭的な役割が強かった陰陽師は、信頼できる助言者かつ相談者となっていったのである。特に、「ケガレ」た存在として宗教や儀礼といった場を中心に王朝貴族社会システムから排除されていた女性にとって陰陽師という存在は、出産という人生の一大局面において「ケガレ」を恐れる験者に代わり、絶えず寄り添い身を守ってくれる存在であった。このような陰陽師への期待と信頼感が、彼らへの信仰心をも生み、呪術宗教家としての一面を獲得していったことが考察できる。

◯ 「ウマイヤ朝におけるカリフの継承―スフヤーン家のカリフ再考―」 大城清夏
 本論文はウマイヤ朝初代カリフ・ムアーウィヤ1世を中心に、スフヤーン家によるカリフの父子継承について考察したものである。考察にあたり、なぜスフヤーン家のカリフたちが父子継承を行ったのか、どうやって父子継承を成し遂げたのか、この2点の問いを明らかにすべく、史料を用いてカリフ継承について考える。本稿ではスフヤーン家の周囲を取り巻く勢力や結婚に触れ、ムアーウィヤ1世がどのような立場に置かれていたかを明らかにしている。その上で史料を読み、その解説を試みることで、カリフ継承までの具体的な様子を知ることができた。史料より、ウマイヤ朝が「玉座をもった王朝」ではなく、共同体や各地域の総督、アラブ部族との繋がりによって父子継承を達成した王朝であることが明らかになった。一方で、ウマイヤ朝のカリフは、父子継承によってさらなる支持を得るという循環した関係性を生むカリフであったと結論づける。

◯「ウィリアム・ペンの「聖なる実験」 稲坂夏実
 本論文はペンシルベニア植民地と先住民であるレナペが平和を維持できた理由を、双方の背景から検討し明らかにすることを目的としたものである。ペンシルベニア植民地を設立したのはクエーカー教徒のウィリアム・ペンである。クエーカーとはジョージ・フォックスによって創設されたプロテスタントの一派で、全ての者に内なる光が宿るという思想から平等主義、平和主義が特徴とされる。ペンは信仰の自由を保障するなど寛容を基本とする社会の実現を目指した。それはレナペに対しても同様であり、友好関係を築くことを重視していた。一方でレナペはペンシルベニア植民地が設立される以前からオランダやスウェーデンからの植民者と衝突しながらも、交易や結婚などを通して一定の協力関係にあった。このようなレナペとヨーロッパ人植民者の関係性の上に、ペンシルベニア植民地とレナペの平和的関係は成り立っていたのである。

2.田中文庫選書委員会からのお知らせ

選書委員会では、史学史・歴史学理論に関する書籍を「田中文庫」として日々収集しています。蔵書リストなど詳細は白山史学会ホームページ「田中文庫」をご覧ください(http://hakusan-shigaku.org/library.html)。2023年度は以下の本を新規に購入いたしました。

◯イヴァン・ジャブロンカ(真野倫平訳)『歴史は現代文学である―社会科学のためのマニフェスト』(名古屋大学出版会、2018年):言語論的転回以後、事実なるものへの懐疑が広がった現代社会に歴史研究者はどのように向き合っていけばいいのだろうか。研究者が歴史する場を明らかにし、歴史を公に開かれたものにしていくことで新たな歴史学のありかたを切り開いていく! 原著は2014年刊。(中村)

◯ヴァルター・ベンヤミン(川村二郎・高木久雄・高原宏平・野村修訳、佐々木基一解説)『複製技術時代の芸術』(晶文社クラシックス、1999年):テレビ、映画、新聞、絵画。メディアはいったい誰が、誰に向けて、どのような目的で作られるのだろうか。メディアが人びとに与える影響と、それを受け取る人びととの関係に切り込んだ、メディア史を志す人は必読の古典的名著。原著は1936年刊。(中村)

3.白山史学会ホームページに関するお知らせ

白山史学会ホームページでは、これまでに刊行された『白山史学』掲載論文の一覧や、今後の活動予定等を掲載しています(http://hakusan-shigaku.org/index.html)。
お手すきのときにぜひご覧下さい。

4.第60回大会・第52回総会について

白山史学会第60回大会および第52回総会は、6月29日(土)午後1時半からハイフレックス方式で開催いたします。報告タイトルや要旨、会場、オンライン参加用のURLなど、詳細は次回以降のメルマガであらためてお知らせしますが、ご報告・ご講演いただくのは以下の方々です。

◯研究報告
 小倉草さん [東洋大学大学院文学研究科科目等履修生、日本古代史]
 矢本彩さん [東都リハビリテーション学院非常勤講師、近代オスマン帝国史]
◯講演
 長谷川岳男先生 [本学教授、西洋古代史]
 倉本一宏先生 [国際日本文化研究センター名誉教授、日本古代史]
 
5.編集後記

会報123号をお送りします。今号は2024年度卒論発表会の告知や、第60回大会・第52回総会のお知らせなど盛りだくさんの内容となりました。例年は会報の発行回数を年2回としていましたが、メルマガへの移行に伴い、今年度からもう少し発行回数を増やして、みなさまにより多くの情報をお届けしたいと考えています。今号はその始めとして企画してみましたがいかがでしょうか。今後もさまざまなイベントのお知らせや会の活動を発信してまいります。みなさまもどうぞお楽しみにしてください。(庶務局長 中村祐也)

2024年4月18日木曜日

『白山史学会会報』第122号 [メルマガ1号] 2023年11月6日

 白山史学会会員のみなさま


会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
白山史学会会報は、本号からメールマガジンで配信させていただくこととなりました。引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)までいつでもご連絡ください。

*紙媒体での配布を希望された方には同内容のものを郵送しています。
*メルマガ発行にあたってみなさまのメールアドレスを登録させていただきましたが、
4日夜に登録確認メールが突然届き、驚かれた方もいらっしゃったかと思います。
お騒がせして申し訳ありませんでした。

*******目次*******
1.第60回大会・第52回総会のお知らせ
2.会務報告(今年度の活動状況)
3.田中文庫選書委員会からのお知らせ
4.白山史学会ホームページに関するお知らせ
5.会計報告
6.編集後記

*****************

1.第60回大会・第52回総会のお知らせ

白山史学会第60回大会および第52回総会は、2024年6月末の土曜日の開催を予定しております。詳細につきましては、来春、メルマガ(会報)やホームページにてご案内さしあげます。どうぞ奮ってご参加ください。今後とも本会の活動にご支援を賜りますよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。

2.会務報告(今年度の活動状況)

◯第59回大会・第51回総会(2023年6月24日:ハイフレックス開催)
・研究報告 
「『夷情億断』の基礎的研究」 東洋大学大学院博士後期課程   林 萌里氏
「天保三年『琉球論』に見る前田夏蔭の琉球認識と外交・海防観」  埼玉県地方史研究会会員      関 廣好氏
 
・公開講演
「徳川家康と官位」 東洋大学文学部教授     木下 聡氏
「歴史のなかのロシア=ウクライナ戦争――田中陽兒の仕事から考える」 東京大学大学院人文社会系研究科教授    池田 嘉郎氏
 
◯常任委員会定例会
7月28日(第1回常任委員会)
10月6日(第2回常任委員会)       
*今年度から対面開催に戻りました(オンライン配信にも対応)。

◯常任委員役職
会長:鈴木道也、
副会長:村田奈々子、
庶務局長:中村祐也、
編集局長:林萌里、
会計局長:山本駿太、
企画局長:上村正裕、
選書小委員会代表:林萌里、
月例会担当部局代表:林萌里、
庶務:竹内洋介、上村正裕、中村祐也、福村恭弘、山田美菜、関口要
会計監査:岩下哲典、平澤加奈子

3.田中文庫選書委員会からのお知らせ

選書委員会では、「田中文庫」として史学史・歴史学理論に関する書籍を日々収集しています。収集にあたっては、会員の皆さまからの御意見や収集希望書籍を受け付けております。専攻を問わず、史学史・歴史学理論などに関する書籍についてお心当たりがございましたら、下記の住所、または白山史学会事務局メールアドレス(hakusanshigakukai@gmail.com)までお知らせ下さいますようお願いいたします。
なお、蔵書リストなど詳細は白山史学会ホームページ「田中文庫」をご覧ください(http://hakusan-shigaku.org/library.html)。

住所:東京都文京区白山5-28-20
東洋大学文学部史学科共同研究室内白山史学会選書委員会

4.白山史学会ホームページに関するお知らせ

白山史学会ホームページでは、これまでに刊行された『白山史学』掲載論文の一覧や、今後の活動予定等を掲載しています(http://hakusan-shigaku.org/index.html)。
お手すきのときにぜひご覧下さい。

5.会計報告

先日開催された第51回総会において2023年度予算案が承認されましたので、会員の皆さまにご報告申し上げます。

○2023年度白山史学会一般会計
収入の部
繰越金:¥6,448,456
学生会員費:¥810,000
一般会員費:¥200,000
雑誌売上費:¥2,000
広告費:¥15,000
銀行利息:¥50
収入合計:¥7,475,506

支出の部
『白山史学』印刷費:¥414,480
会報等印刷費:¥70,000
事務費:¥20,000
通信連絡費:¥30,000
銀行等振込手数料:¥1,000
月例会費:0
大会費:¥70,000
会議費:¥10,000
インターネット関連諸経費:¥5,000
『白山史学』バックナンバーPDF化経費:¥170,555
発送外部委託費:¥200,000
納税:¥7,000
支出合計:¥998,035
次年度繰越金:¥6,477,471

○2023年度白山史学会特別会計
収入の部
繰越金:¥608,551
銀行利息:¥10
収入合計:¥608,561

支出の部
書籍代:¥15,000
文具代(ラベル代等):¥5,000
支出合計:¥20,000

6.編集後記

会報122号をお送りします。本号では、例年通り本会の活動状況や先日の総会で承認された2023年度予算案の報告などを掲載しています。
本号から『白山史学会会報』はメールマガジンに移行することとなりました。移行にご協力いただきました会員の皆様に、深く感謝いたします。
紙媒体で作ってきたものが、電子媒体に移行するということは、少し寂しい思いもあります。しかし円滑な方法で広範囲に会報を送信できるようになることは、より会が発展するきっかけにもなると期待しています。
今後とも白山史学会の活動にご理解ご協力いただきますよう、よろしくお願いします。
(庶務局長:中村祐也)

『白山史学会会報』第127号 [メルマガ6号] 2025年4月2日

白山史学会会員のみなさま 春光の候、会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。『会報』第127号(メルマガ6号)を送らせていただきます。 なにかお気づきの点がございましたら、学会事務局(hakusanshigakukai@gmail.com)まで、い...